第57回国際数学オリンピック大会(IMO 2016)香港大会

◆参加報告
  第57回国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad:IMO)は、7月6日から16日まで、中国の香港で開催された。参加各国の団長団は、選手団よりも一足早く、7月6日に香港入りして大会の準備に努め、9日には選手団が現地入りし、翌10日に開会式が行われた。コンテストは、11日、12日の2日間に渡って行われた。
  大会は香港科技大学(The Hong Kong University of Science and Technology:HKUST)で行われた.香港はちょうど雨季の蒸し暑い季節であったが、学生寮にも冷房が完備されおり,コンテストも大学の体育館を会場として行われたので、体調面での問題は特になかった。
  選手達はよく頑張り、下記のように金メダル1個,銀メダル4個、銅メダル1個を獲得して、国別順位10位という好成績を収めた。
  コンテスト後、選手達はディズニーランドなど地元の観光等をしつつ、外国の選手達との国際交流に努めた。15日に閉会式が行われ、翌16日に日本代表団は帰国した。
  そして、19日に文部科学省を表敬訪問して、馳文部科学大臣に大会結果を報告し、表彰状を授与された。

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(詳しい国際順位はこちら

日本代表選手の成績
メダル 氏 名 学 校 名 学年
金メダル 谷 悠太 開成高等学校 2年
銀メダル 藏田 力丸 灘 高等学校 3年
銀メダル 村上 聡梧 筑波大学附属駒場高等学校 3年
銀メダル 青木  孔 筑波大学附属駒場高等学校 3年
銀メダル 松島  康 東京都立武蔵高等学校 2年
銅メダル 井上 卓哉 開成高等学校 3年


日本代表団の役員
団長 森田 康夫 東北大学名誉教授
副団長 田ア 慶子 (公財)数学オリンピック財団
オブザーバーA 北村 拓真 東京大学理学部数学科
増田 成希 東京大学理学部数学科
山下 真由子 東京大学工学部計数工学科
オブザーバーB 淺井 康明 (公財)数学オリンピック財団


☆IMO選手達の声

各選手に、IMO香港大会の感想を書いてもらいました。
@中国(香港)の印象
A宿舎について
Bコンテストについて
C外国選手との交流について
D観光での印象
E今回のIMO全体の感想

青木 孔 選手
@ 綺麗な夜景を構成するような建物には閉会式以外で行けず、香港は山という印象だった。また,香港は夏で,日本より暑く湿度は高く、雨は突然で大変だった。
A 香港科技大学の7号館でいかにも学生寮だった。食事できる場所に出るまで長い移動が必要だった。学食は雑に選んでも無難な味がした。
B うまくいかなかった。1日目は始まって1時間少しから得点が伸びなかった。2日目は5番で気づいた時には残り10分で無理だった。
C 遊び部屋は用意されず、寮のセキュリティは固く、開会式や閉会式その他のイベントでは、運営側が用意しているものは時間を多く取り、終わるとすぐに退去勧告があり、他国の選手との交流は固定された少ない人としかできなかった。
D 香港ディズニーランドがこの大会のスポンサーであったため,ディズニーランドに行くことができた。日本では行ったことがなかったので,素直な気持ちで楽しめた。
E パッケージの大きさに押された。閉会式で.委員会の長が今回を現代に対応するIMOの形と言っていたので納得した。今後,選手以外として行くことに興味が出た。最後に、関係者のみなさま、本当にありがとうございました。

井上 卓哉 選手
@ 香港というと高層ビルが建ち並んでいるイメージですが、宿泊した大学は中心部から離れていたので,あまりそのような雰囲気は楽しめませんでした。屋外はむしむしとしていて暑く,スコールもありました。
A 宿舎を始め室内はどこもエアコンが効いていました。また、食事もとても美味しかったので快適に過ごすことができました。
B コンテストは、満足のできる結果ではありませんが、準備はしっかりできたと思うし当日も落ち着いて試験を受けられたので後悔はありません。ただ,最後までIMOにはそっぽを向かれたなぁー、もっと良い結果になる可能性も感じていただけに残念だなぁという気持ちです。
C 今年は、あまり交流場所は用意されていませんでしたが、英語が少し話せるようになっていたのと、いろいろな国のガイドさんが日本チームのところに遊びにきてくれたので,たくさん国際交流できました。
D 観光では香港ディズニーランドに行きました。日本のディズニーランドと比べると小さいですが、日本選手たちと楽しく充実した時間を過ごすことができました。
E 今回の大会は環境も整っていたし、多くの人に応援してもらって素直に嬉しかったし、その分今は悔しく申し訳ないです。それでも、最後のIMOをしっかり楽しむことはできたのでとても良かったです。 最後になりましたが、団長の森田先生、財団の淺井さん、田アさん、コーディネーターの北村さん、山下さん、増田さん、代表のみんなにとても感謝しています。ありがとうございました。

藏田 力丸 選手
@ 夏の香港はとても暑く、歩くだけで汗がにじみ出てきました。外を出歩いているときは30秒に一回くらい暑いと言っていたような気がします。また雨季でもあり、湿度が高く、何度かスコールに見舞われたりもしました。
A 僕たちは香港科技大学という大学の寮に宿泊しました。部屋はカードキー・オートロックの2人部屋で、スーツケースを開いていると両側の壁に接しているベッド間の通路がふさがってしまう程度に狭かったですが,特に不満はありませんでした。ただ大学が広く、また高低差があったので、食事や試験の際の移動が大変でした。
B 試験は大学の体育館で、全コンテスタントが一堂に会した状態で行われました。机は十分な広さがあり、また床の上に物を置くこともできたので快適に試験を受けることができました。問題は、幾何が1問しか出題されず個人的にはやや苦しいものでした。結果も、1点差で金を逃す悔しいものとなりました。
C ただただ楽しかったです。同年代の海外選手と会話したりゲームしたりするのはなかなか経験できない体験で、非常に有意義なものだったと思います。また、ガイドさんたち(香港科技大学の学生さん)ともたくさんコミュニケーションしました(ヨーロッパの選手は自分たちだけで活動したがるそうで、取り残されたガイドさんたちとよく話しました)。写真もたくさん撮りました。もう一回くらい出場したかった、と強く思いました。
D 公式に設定された観光の日程は二日間あり、初日はDisney Landに、二日目はVictoria PeakとStanley Market、そしてSt Stephen's Collegeに行きました。初日のDisney Landは、香港に到着する前から行きたいと思っていたこともありとても楽しかったです。二日目も、キャンパスツアーはイマイチでしたがそれ以外は楽しかったです。買い物する時間が満足に取られなかったので、キャンパスツアーなしで他の2箇所にもっと長時間いられればよかったのに、と思いました。
E 試験の結果を忘れ精一杯楽しんだIMOはとても充実したものになりましたが、日本に帰って来てからは、5年間の競技生活と、その集大成としてはあまりに情けない結果を思い返しては溜息をつく日々を過ごしています。この1点を笑って受け入れられる日が来ることを願うばかりです。最後になりましたが、大会中支えてくださった財団の方々やコーディネーターの方々、そして応援してくれた家族、親戚、友人の皆、学校の先生方、本当にありがとうございました。

松島 康 選手
@ IMO香港大会は自分にとって初めてのIMOかつ初めての海外旅行だったが、一言で言えば楽しかった。それは、環境はあまり悪くなく、積極的に交流出来たからだ。
A 試験会場はHKUSTという大学の寮で、食事はMeal Valtureという券が先に配られ、大学内の食堂で自由に利用できる形になっていた。特にカフェテリアがおいしかった。ホテルの部屋は2人の相部屋で、2部屋あたり1つのシャワーを使えるようになっていた。そのほかにlecture room、common room、computer roomなどがあった。
B 試験は一つの大きな部屋で行われた。部屋は大きく6等分され、それぞれの領域に代表選手1名ずつが座った。持ち物は事前に配布された袋に入れ筆記用具と食べ物・飲み物を持ち込めた。チェックはあまり厳しくなく、小さいぬいぐるみだったら持ち込みOKだった。WC、Help、Water、Paper、Questionの五枚のカードが置かれていて、カードを上げて試験官に知らせる仕組みだったが、対応はあまり良くなかった(WCで30分以上待たされた生徒もいた).試験開始はいきなりといった感じだった。試験終了も割とガバガバで、名前を書くのを忘れていたが書くのを許してもらえた。
C 普段遊べる場はほとんどなく、日常的な国際交流はしづらかったが、この大会ではCultural night として国際交流する場が設けられた。そこで折り紙で手裏剣を折りまくり、海外の様々な選手と仲良くなることができた。また、ガイドとも割と仲良くなれ、部屋の中で一緒に話したりもした。国際交流をするには英語の上手下手よりも積極性だと思う。来年も戻ってきて、更に多くの人と交流したいと思った。

村上 聡梧 選手
@ 事前に調べていた通り、東京と同じくらいの気温だったが湿度が東京のそれよりはるかに高く、かなり蒸し暑かった。また強い雨が突然降りだすことが何度かあり、傘をいつも持っていないと不便だった。
A 香港技術大学の学生寮に泊まった。部屋は二人部屋で、割と過ごしやすかった。ただ、風呂がとても狭く、使い勝手が悪かったのがつらかった。宿舎から試験会場や食堂まではほとんど屋根の下を通って移動できるので、雨が降ってもあまり問題がなかった。
B 自分は初めての国際大会だったので、初日はかなり緊張していた。しかし問題を解いていくうちに集中できたので、一日目、二日目ともに二問を完答することができた。ただ両日とも、一問は方針すらまともに立たなかった問題があり、これらの問題で部分点を得ることができれば金メダルを取りえたと思うと、悔しいものがある。
C ほかの選手の話によると、今年の大会は、それまでの大会と比べてあまりほかの国の選手と遊びやすい環境でなかったらしい。自分は試験以後の夜に他国の選手とトランプなどでゲームをして遊んだり、他国の選手と写真を撮る際に少し言葉を交わせたりしたくらいで、あまり多く交流をしたほうではなかったが、それでも今回の大会での外国選手との交流はとても印象に残っている。
D 観光では、香港ディズニーランドなどを訪れた。香港ディズニーランドは自分が想像していたよりも大きく、いくつものアトラクションを楽しめた。
E 今回のIMOは、食事も大体おいしかったし、外国の選手と交流したり、香港の観光を楽しんだりすることができた。なので、試験の結果のことを除けば、とても楽しい経験になった。

高谷 悠太 選手
@ 香港は日本よりも少し蒸し暑かったため、あまり外を歩かなかった。雨が多く、天気雨や突発的な豪雨も珍しくなかったため、傘は必要不可欠だと感じた。 また、食事はおいしかった。米は日本のものよりパラパラしていたが、カレーなどには合っていておいしかった。さらに、大学内の中華料理屋ではコースや点心を食べられ、事前に配布された食券を使って食べ放題のように食べることができた。
A 大学の寮だと聞いていたため、冷房などの設備が不十分ではないかと心配していたが、エアコン・扇風機・冷蔵庫すべてあり、快適であった。また、大学が広く,食事をする場所もたくさんあったため、いろいろなものを食べることができた。
B 今回の問題セットは自分に合っており、ベストを尽くすことができた。ただ、その分自分の実力がよくわかってしまい、地力を上げなければならないと感じた。具体的には、Day1では1番が30分で終わったものの2番で3時間近くかけてしまい、Day2では,4番で1時間強使い5番にも2時間かかったので、どちらの日も3番級に時間をかけることができず、いろいろやりたいことが残ったまま試験終了となってしまった。これが今の自分の実力なので、来年はまた実力を上げてもっと高い点数を取りたい。
C 今回、宿舎に海外選手との交流のための部屋が用意されていなかったため、あまり交流することができなかった。しかし、Cultural nightというイベントでは海外の選手とトランプで一緒に遊ぶことができ、楽しかった。
D 観光は二日間あり、初日は香港ディズニーランドへ、二日目は大学のキャンパスツアーとヴィクトリアピークに行った。香港ディズニーランドは日本よりはあまり怖くはなかったが、純粋に面白く楽しかった。 特に、パラシュートドロップでは高いところからディズニーとその周りの景色を見渡すことができ、気持ちよかった。待ち時間は長いと50分程度あり、暑い中大変であったが、選手間で話していたら退屈せずに過ごすことができた。 二日目はバスや道があまりよくなく、バスで山を登っているときに酔ってしまい、午前中は気分がよくなかった。しかし、商店街ではお茶飲みなど目的のお土産を買うことができ、昼食のころには回復していた。午後のヴィクトリアピークは眺めがよく、おいしいと聞いていたエッグタルトも食べることができたので、もっと時間がほしかった.帰りのバスでは,寝られて酔わなかったので良かった。
E あまり気分が高まることはなかったが、全体的に安定して楽しめた。僕にはまだ来年も機会があるので、しっかり国内選考を通ってより良い成績をとりたい。


☆第57回IMO香港大会印象記

団長 森田 康夫
採点、コーディネーションの感想
北村君、増田君、山下さんが選手の答案を丁寧に読んでCoordinatorsに説明してくれたので、ほぼ希望する得点を得ることができた。 金1、銀4、銅1で国別10位という結果は満足すべきものかと思うが、韓国やシンガポールの成績を見ると、日本ももう少し頑張る必要があるとも感じている。
外国役員との交流
今回の日本の主目標の一つである「2023年のIMOを日本に誘致する」ことについて、Advisory Board Chairman のG. C. Smith氏(英国)とAdvisory board のY. Song氏(韓国)に日本の希望を伝えた。 その結果、 Jury Meeting では今後の予定として、2017年ブラジル、2018年ルーマニア、2019年英国、2020年ロシア(ビデオで紹介)、2021年米国(口頭で説明)を確定させた後、さらに2022年についてはノールウエイから、また、2023年については日本から打診があったことが紹介された。

副団長 田ア 慶子

 IMOスロベニア大会より、オブザーバーBとして参加し、今回の香港大会で、初めて副団長として参加させていただきました。
 IMOは、コンテストの厳正性・公平性を保つために、問題の選定や翻訳に携わる団長団(団長+オブザーバーA)と選手の引率に携わる副団長団(副団長+オブザーバーB・C)とは出発日も異なりますし、2日間のコンテストが終了するまでは一切連絡をとってはならない規則になっています。
 今回はその規則もより厳しくなり、副団長側がコンテスト最中に当日の問題を受領した場合は、コンテスト終了時刻まで指定された講義室に留まり、通信機器も一切使用禁止でした(日本はコンテスト終了後に問題を受領)。
 話が前後になりましたが、今回の願いは、選手全員がコンテストで各自の力を発揮できることはもちろんですが、それとともに、世界各地でテロ行為が頻発している情勢もあり、全日程、安全かつ無事に過ごし、全員笑顔で帰国することを第一としました。
 さて、副団長側および選手の宿舎並びにコンテスト会場は、香港科技大学(HKUST)という香港中心部より1時間半離れた清水湾を望むロケーションの公立大学でした。創立25年ということで設備等も比較的新しく、宿舎で使用した学生寮も特に不自由は感じませんでした。食事も、大学構内の学生食堂やレストランで使用できるミールクーポン的なものが多量に配布され、自由に食事をとれる形式でした。
 2日間のコンテストも、選手全員元気で臨むことができ、結果、全員メダルを獲得し、国別順位も昨年から大躍進の10位でした。選手にとっては、それぞれの目標の点数・メダルがあって、悔しい思いをした選手もいたとは思いますが、IMOのコンテストという特殊な緊張や環境の中で頑張ったことは将来の糧になっていくことはまちがいないと確信しています。
 また,コンテストだけではなく、ディズニーランドのエクスカーションをはじめ、カルチャーナイトや国際交流等で貴重な体験を積んだことも大きな宝となっていくことと思います。
 大会を無事に終え、今は選手全員の更なる成長を願っております。

オブザーバーA 北村 拓真

 香港はとても良い街でした。海沿いで景色が素晴らしく(その分湿気は多いけど)、ご飯は日本人の口に合い、団長団の泊まっていたホテルはとても快適でした。試験が終わってからは生徒と同じ大学寮に移ったのですが、そこまで不満なく過ごせました。日本との時差も少なく、選手たちは例年より落ち着いて試験に臨めたのではないでしょうか。
 今年の試験は、例年は2題出される幾何の問題が1題しか出されなかったり、久しぶりに多項式を題材とした問題が出されたりと、ここ数年の傾向とは異なった出題がされました。コーディネーション(採点)では主に組合せ論の問題を担当しましたが、日本人選手はこの分野でよく健闘し、結果世界で10位という成績を収めることができました。ただメダルの色という点では、あと1、2点で良いメダルが取れたのにという選手が多く出てしまい残念でした。去年同様今年も採点基準に厳格な印象があり、良いアイデアがあっても正確に議論していなければ点が来ない、というケースが多く見られたのが原因の1つかもしれません。これからIMOに参加する生徒には、問題が解けた後、正しく証明が書けているかを見直す習慣を付けてほしいです。
 IMOには今年で5回目、オブザーバーとしては去年に続いて2回目の参加でした。初めて参加したのはもう6年前、自分にとって未知の国だったカザフスタンに、試験への緊張感とワクワク感でいっぱいになりながら降り立ったのを憶えています。オブザーバーになって、その緊張やワクワクはもう味わえなくなってしまったけど、今の選手たちが同じ気持ちで試験に臨んでいるのをサポートできたのはとても幸せでした。
 生徒に近いオブザーバーとしての参加はきっと今年で最後ですが、いつかまた何らかの形でIMOに参加できたらなと思います。

オブザーバーA 増田 成希

 香港の気温は日本と同じくらいだが、湿度が非常に高く(80〜90%くらい)、空気がぬるぬるした感じだった。また、山と海がとても近い険しい地形をしており、限られた土地に高層の建物(郊外では公営住宅)が多数ひしめいている様子は壮観だった。目につくものの多くには、広東語のほかに英語も併記されており、さらに広告や商品名などには日本語もしばしば書かれていたのでおもしろかった。
 大会についてであるが、久々に幾何が1問しか出ず、また他分野との融合問題のような出題が多く、特に組合せ論的思考を要するものがいくつか出た。問題会議の様子では、今後もこのような問題への対応能力は重視されていくように思われる。難易度自体は昨年より易しく、適切なものであった。僕の担当した問題では、採点及びコーディネーションは特に揉めることもなく円滑に進んだ。外国の団長団は団長1人のところも多く、それに対し日本は4人でかたまってしまったので、もう少しばらけたほうが交流しやすいように感じた。
 今年の日本の選手団は、組合せ論に強い選手も多かったので、幾何の得意ないくつかの強豪国が苦戦する中、好成績を残すことができた。
 出発前は、オブザーバーAとしての役割を果たせるか不安であったが、結果的には楽しく仕事をすることができ、点心もたくさん食べて良いIMOになった。関係者の皆様に深く感謝したい。

オブザーバーA  山下 真由子

 今年のIMOは、私にとっては2度目、オブザーバーとしては初めての参加でした。生徒時代とは全く違った視点で参加したのはとても面白い経験でした。
 まず問題を選ぶ会議に参加しました。国ごとに出したい分野や生徒のレベルが様々で、各国の団長が様々な意見を持って盛んに議論がなされていました。 どんなに細かい事項に対しても1ヵ国が1票ずつ持って投票が行われ、とても民主的だと思いました。 ここ数年、1番級と3番級に初等幾何の問題が1問ずつ出題されていたため、そろそろその流れを変えたいという意見が多かったようで、今年は初等幾何が第1問のみとなりました。 個人的には幾何が好きなので少し残念でしたが、今年の日本代表は組合せが得意な生徒が多く、有利なセットだったのではないかと思います。また、全体的に手数が少なく、発想を問う部分が大きい印象を受けました。
 コンテスト終了後は選手団のいる大学に移動しました。大学の寮に泊まったのですが、設備は簡素ですが必要十分なものがあり、きれいに掃除されていて衛生面も全く問題なかったです。 それまで団長団のいたホテルが豪華すぎたので、このくらいが丁度良いと感じました。その後のコーディネーションでは、想像していたより厳格に採点基準が適用されていると感じました。 特に、図で説明しているがきちんと文として書いていないために減点されるなど,勿体無い失点も見られ、答案の書き方について強化合宿などで指導する必要性を感じました。
 結果として日本選手はどの選手も健闘し、好成績を残せたと思います。閉会式で各国の選手が表彰され、激励の言葉を受けている姿を見て、世界中にこんなにもたくさんの可能性にあふれた中高生がいて、数学の将来を担う人材として期待されているのだと感じて、感動してしまいました。 自分も3年前には選手の席にいたというのは少し不思議な感じがして、自分もその期待に応えられる人間に少しでも近づけるように努力しなければ、と気持ちが新たになった気がします。 選手達のこれからの活躍を楽しみに感じるとともに、数学オリンピックに関わる全ての中高生にとって数オリが良い経験になるように協力していきたいと思いました。

オブザーバーB 淺井 康明

 第57回International Mathematical Olympiad (IMO)が、7月6日から7月16日まで中国・香港で開催され,私は今回オブザーバーBの資格で選手団の引率にあたった。
 香港は、中国(中華人民共和国)の南部にある香港特別行政区である。1839〜1842年のアヘン戦争後、大英帝国の植民地となったが、第二次世界大戦(1941〜45年)後1997年にイギリスより返還され、一国二制度の原理の下、特別行政区となった。歴史的・経済的に大きな課題を抱えつつも,逞しく発展してきた地域であり,IMO大会開催が2回目ということで深い関心を持って大会に臨んだ。
 大会は香港科技大学(The Hong Kong University of Science and Technology:HKUST)で行われた。香港はちょうど雨季の蒸し暑い季節であったが、学生寮にも冷房が完備されおり、コンテストも大学の体育館を会場として行われたので、選手達の体調面での問題は特になかったようである。
 大学の校舎は宿舎(学生寮)からエレベーターを3回乗り継いだ斜面の上の台地に広がっており、食事会場に行き来するのは少し大変であった。しかし、様々なレストランを利用することができ、選手達は毎回食事会場を変えて楽しんでいた。
 今回の日本代表選手は、高校3年生4名、2年生2名であった。このうち、前回までのIMO代表選手に選ばれたことのある生徒が3名もいて、IMO初参加の生徒をよくリードしてくれ、選手のまとまりは大変良かった。
 今年のコンテストの問題は,図形の問題が1題だけで日本選手の得意とする組み合わせ論的な問題が多く出題されたということで、日本選手にとっては例年より易しく感じたようである。結果、全員がメダルを獲得し、金メダル1、銀メダル4、銅メダル1、国別順位10位という素晴らしい成績を上げたことは、大きな喜びであった。
 コンテスト後、選手達はディズニーランドなど地元の観光等をしつつ、外国の選手達との国際交流に努めた。15日に閉会式が行われ、翌16日に日本代表団は無事帰国した.19日には文部科学省を表敬訪問し,馳文部科学大臣からも表彰状をいただいた。
 今年は、フランスを始めとする国々で、いわゆるテロによる多くの犠牲者が出ており、IMOでもテロへの対応で厳しい警備体制を余儀なくされていた.テロのない平和な世界が、再び訪れる日を心より願う。






◆国際順位  参加国  109ヶ国・地域、602名(男子531名、女子71名)
順位
 1 アメリカ
 2 韓国
 3 中国
 4 シンガポール
 5 台湾
 6 北朝鮮
 7 ロシア・イギリス
 9 香港
10 日本
11 ベトナム
12 タイ・カナダ
14 ハンガリー
15 イタリア・ブラジル
17 フィリピン
18 ブルガリア
19 ドイツ
20 ルーマニア・インドネシア
22 、 イギリス、 ブラジル
金メダル 44名、 銀メダル101 名、 銅メダル135名

開催国の Web Site は、下記の通りです。
http://www.imo2016.org/Home.php


◆参加者の写真


日本選手団
(ガイドさんとともに)

開会式

コンテストを終えて
(中国料理)


恒例のIMO人文字

国際交流

日本代表団


Handover of the IMO Flag
to Brazil

文部科学省表敬訪問
(馳大臣とともに)


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