数学オリンピック財団 公益財団法人  数学オリンピック財団

理事長ご挨拶

数学と数学オリンピックについて

  


公益財団法人 数学オリンピック財団 
理事長 藤田岳彦 
(中央大学理工学部教授・一橋大学名誉教授) 

 

1.数学の社会における役割

 数学は全ての科学を記述する言葉であり、また、論理はその基礎を支え人間全体の活動を統括し分析する基本的な原理です。それゆえ、古代ギリシャの頃から数学は教育の基本となってきました。
 例えば、幾何学はどちらの土地が大きいかなどを測る根拠として、代数学はお金のやりとりや記述などを通じて基礎が作られ発展してきました。現代でも数学は様々なところで使われています。例えば、経済活動の一つの基本はお金に関するものであり、また、現在と未来をどのように結びつけるのか?などの解析学、不確実解析の基本となる確率論が凄く重要となります。計算機や情報科学は、1920年から1950年頃に数学の基礎と論理との関わりを研究する数学者の活動から生まれましたが、今でも数学の基礎(数学基礎論、数理論理学)と情報科学は非常に近い関係にあります。
 また、数学は上に述べたような応用だけでなく、数学そのものが面白いということも多くの人たちが感じているところです。整数論や代数学そのもの、幾何学そのもの、解析、確率論そのものの面白さは、文化としての人間活動としても充分理解されています。
 しかし、一見何の関係もないような整数論の定理が現代社会において暗号作成に持ち入られたり、抽象的な幾何学が、宇宙や分子の構造分析に使われたりしており、応用数学と純粋数学を区別しないという考え方の方が正しいのかもしれません。


2.教育の目的と数学オリンピック

 国際数学オリンピック(IMO)は、大学教育を受けていない20才未満の学生(つまり、ほとんど高校生、一部は中学生、小学生)が参加できる競技数学の大会です。
 日本国民の基礎学力は世界の中でも非常に高く、そのことが日本の国力を支えてきました。ただ、イノベーション、ブレイクスルーを発見し、実行するには基礎学力の引き上げだけでなく、上位層の教育も非常に重要になってきます。数学オリンピックは、数学の上位層をより多く、より高くすることを、主たる目的とする競技数学の大会なのです。
 数学オリンピックは、数学に関して優れた才能を持つ若者を見出し、それらの人の才能を伸ばすことを目指していますが、その他にも数学や科学に興味を持つ若者の間の交流を盛んにすることも目指しています。
 第1回国際数学オリンピック(International Mathematical Olympiad:IMO)は、1959年東欧7カ国の52人が参加してルーマニアで開かれましたが、その後西側諸国も参加し、世界の多くの国が数学オリンピックに参加するようになり、2023年の国際数学オリンピック日本大会には112カ国の618人が参加しました。
 日本は先進国のなかでは参加が一番遅れてしまいましたが、1990年の中国大会からIMOに参加しています。その年は数学オリンピック日本委員会(The Japanese Committee for International Mathematical Olympiad:JCIMO)を作り、日本で数学オリンピックを行い、派遣する選手を選びました。しかし、日本が毎年IMOに参加できる様にするため、中国大会の後に川井三郎氏・藤田宏氏・野口廣氏などが中心となり数学オリンピック財団(The Mathematical Olympiad Foundation of Japan)を作り、JCIMOを数学オリンピック財団の委員会とし、数学オリンピックを財団が主催する日本数学オリンピック(Japan Mathematical Olympiad:JMO)として立ち上げ直しました。

 数学オリンピック財団は2013年4月1日からは、新しい公益法人制度が施行されたことを受け、公益財団法人となりました。

 数学オリンピック財団では、次の事業を行っています:
  1.  日本数学オリンピック(JMO)の開催
  2.  日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)の開催
  3.  国際数学オリンピック(IMO)への日本選手団の派遣
  4.  アジア太平洋数学オリンピック(APMO)への参加
  5.  ヨーロッパ女子数学オリンピック(EGMO)への日本選手団の派遣
  6.  数学オリンピックに関する教材の開発など
  7.  数学、特に数学オリンピックに必要な知識の普及活動
 2003年には国際数学オリンピック日本大会が東京で、また、2023年には千葉幕張メッセにて第64回国際数学オリンピック大会が開催されました。ご協力ありがとうございました。


3.ご協力のお願い

 数学オリンピックに参加する人は、その準備等において、論理力・理解力・発想力などを培うことができ、物事を把握する能力、また、社会生活において必要な力を向上させることができます。
 数学オリンピック財団は、より多くの若者が日本数学オリンピック(JMO)と日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)に参加することを希望しており、皆様がそのためにご協力していただけることを希望しています。
 なお、数学オリンピック財団が先に述べた様な活動を安定的に行うためには、ある程度の資金が必要です。現在数学オリンピック財団は、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)からいただいている補助金と、日本数学オリンピック(JMO)と日本ジュニア数学オリンピック(JJMO)の参加費を主たる活動資金として、財団の基本財産の利子とサポート企業からの資金を加えて運営していますが、さらに資金が必要です。
 数学などに優れた若者を育成したい企業・団体・個人や、日本の教育に貢献することを希望されている企業・団体・個人の方には、数学オリンピック財団のサポーターとなっていただけるようお願い申し上げます。



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TEL 03-5272-9790
FAX 03-5272-9791